詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
香りを運ぶ潮風に乗って、私の夢見たあしたが、ようやくやって来たのだ。母の大好きなあしたのりんごを連れて。


  散文の海へ11

 猫又木浜海水浴場の駐車場は、十二、一、二月の三ヶ月間は閉鎖される。従ってわたしたちは長い冬休みを過ごすことになるが、倉庫の詰め所に暖房設備のないことをおもうと、それは至極当然だった。なにしろ十一月の倉庫ですら寒くて耐えられないのだから。
 その長い冬休みもすぐに終わった。この歳になっても冬休みは学生気分でいたからだ。
三月。公転軌道をひと回りしたビーチには塵みひとつ落ちてはいない。あの夏の日の回遊魚みたいな塵みたちはどこへ消えたのか。嘘みたいにきれいだ
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