詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
の笑みを浮かべて彼は、海の見える窓辺のテーブルに母を案内してくれた。
「ね、なにがいい? かあさんの好きなプリンもあるわよ」
「……あたしはミルクチィーでいい」
どことなく不機嫌そうだったけど仕方ないかも。お店には彼ひとりしかいない。バイトのひとはもう帰ったみたいだ。
「ねぇ、圭子。ボーイフレンドって、あのひとかい?」
「うん、そうよ」
「でも圭子……あのひと、もう禿げてるよ。いいのかい?」
「うん、いいの」
母の言い草があまりにもおかしくて涙が出そうだった。
「お待たせしました!」
アッサムの紅茶と、うすい小皿にのったアップルパイがテーブルに並んだ。母は紅茶を啜っただけ
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