朝食/這 いずる
 
朝が来る
不鮮明に蓋をして
パンを食べて
珈琲を入れて
普通のふりをして
何もかも分からないようにして

口は何も吐かず
文字が頭を流れていく
雲を掴んで啜って飲み
訳が分からなくなってしまう
雨が降る

詞が迂闊に転がり落ちて
何も評する所がない

遊楽園で一緒になって
遊楽園で一緒に終わった
楽しい思い出になれた
なんの利にもならないことが
楽しくて嬉しくて
それを覚えていてほしい

君は光っている
地獄の向こう側か
宇宙の深淵の透ける色の
藍色をつんざく
確定のない未来として
詞にはもう写し取れない
空が梢に昇った時に
霞が見えるでしょう
それを啜る
君を薄めて想う

どこへ行きたかったか
分からない歳になった

君と私と私たちの輝かしいような不鮮明が
煮詰まり焦げ付いて
二度とジャムは同じにならないでしょう
パンに塗るものがなくなってもパンを食べる

朝だよ
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