デモ/藤原絵理子
 

夕暮れになると虫を求めて燕が飛び回る
蝙蝠の飛翔よりずっと気分がいい
燕はハレの礼服になれたけど
蝙蝠は傘にしかなれなかった


自分の大学がイスラエルの企業から恩恵を受けている
それが許せないのだそうだ
昔アマゾンプライムで観た映画の
学生たちが許せなかったものは何だったのか
忘れてしまったけど とりあえず
大義さえあれば人殺しだって許される
なんてことがあってはならないということなんだろう
けど歴史上の古文書は
それが人間なんだと語っている


どんなにつらくても5月には初夏の風が吹く
その爽やかさに涙も乾くよと歌う売れ線の唄の
歌詞を作った人は本気でそうは思っていない
涙が枯れ果てるなんてことは起こらないし
袖が涙でぐっしょりなんてありえない
おねしょじゃあるまいし
作品は手を離れたら一人歩きしますからね
なんて無責任なことを笑顔で話す
雑誌のインタビューだってけっこうな収入源だ


燕の鳴き声はかわいい
蝙蝠の鳴き声は
気味悪い超音波だから
誰にも聞こえない


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