Another Ideology/痛
世界のためなら
僕は、永遠に非在に見違えられる騙し絵の光覚になったっていい
(降り積もる雪は傷口を世界から忘却させ、
(痛みだけが残響する
(こんなに強く握りしめているのに
(君の手は僕の手の中でどんどん冷たくなっていく
(僕はこんなに近くにいるのに
(君の吐く息だけがどんどん白くなっていく
消えない痛みから消さない痛みへ
内向する痛覚の継起に介入する主体の意志が、幾千の星の軌道が露光する凍土の果てに澄ませる光を「美しい」と言うには
家路から遠く離れた場所で凍て死んだ人たちの顔を
僕はもう、あまりに多く知り過ぎてしまっている
一つの祈りに深く組み合わされる指をひたすらに折っていくだけの世界から、再会の約束に交わされる小指の脆さを守るために
この白夜に降る雪はどこまでも、どこまでも優しくあらねばならない
僕は瞼を失った千の瞳の上に白衣を広げ、新しい地球儀を調律する讃美歌の絶対音感に
狂いのない痛覚が患った「世界」を
透明になるまで何度もくべ直す
「もう二度と、悪い夢を見なくていいように」
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