(n((o),(w)),)(h)ere)詩人はきっといつか詩を書けなくなる/竜門勇気
 
頭が回った。
そして同時に、その情けなさを裁くためにも頭が回った。死はそこにあるのに。
今ここにいるのに。愛していることが分かっているのに、死はそこにいるけど、すぐそばにいるけどここにまだ死は訪れていないのに。
膝に猫をのせて、耳の後ろから背中まで撫でた。
急に猫が咳きこんだ。餌を吐くときとは違う。水のようなものをスプーン一杯ほど吐いた。
必死になって撫でていた。無我夢中で撫でていた。
取り返しのつかないなにかがここに来た。奥歯が音を立てるほど食いしばったが涙が滑らかな毛の上に飛び散った。
何かを否定したいのか首を振っていたらしい。
抱きかかえた首から力が抜けていたのが分かった。
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