迷宮の蜂/ただのみきや
 
霧のなかで羽ばたく
ふるえる声
光の底に沈んだ
夜の鱗揺らして


一枚のガラスのよう
結露した
   時間
鏡にしかなれない
いつも裏返ったわたしたちの
化石のような孤独 甘い菓子


緑は燃え
真昼までささやいた
蜘蛛の巣をたわませる
奇跡の重さ
空気の宝石


掌で散って
残らない
蝶のように

糸は溶ける
縫う針の痛みの記憶だけが
去る夢の
気流に触れて


赤く見開いて
天を凝視する
  花
覗くわたしを覗く
   花
わたしを貪る花よ
太陽を支え
宇宙の真中に在る
     花 いま
いつくしむべき輪郭を失
[次のページ]
戻る   Point(5)