ある街の美術館で/番田 
 
昨日、街の美術館で見た、映像作品をぼんやりと思い出す。それは、ハンガリーのどこかの工場で清掃作業に従事している男を扱った作品だった。特に映写的効果を狙ったものではなく、男の様子を淡々と写し続けた映像に、僕は特に感じ入るものもなかったが、その男は思想にふけり、体を鍛えるトレーニングを日々欠かさず行っているという旨の話が語られていた。そこでは、男が鉄棒で懸垂する様子の映像が映されていた。現代において、そのような人間は日本や諸外国にはあまりいないような気もしたが、あの映像が伝えていたことが何なのかを考えると、あまり、それは、はっきりしなかった。他には、台湾の縫製工場に勤務する工員の寝泊まりするベッドルー
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