メモ(検索窓)/はるな
 

わたしたちの夜、わたしたちの朝、そしてもちろんわたしたちの昼間も、キーワードによって圧迫される。AIが整える意味の上を歩き、見上げる空は検索窓の細長さ、いいのさ、だってどちら側も同じだもの。夜にはなにもないって言ってたね、朝にある日差しとか温度とか、あちこち走り回る子供たちとか駅の喧噪とかパン屋からくる香ばしさとかさ。
でもあるんだよ。夜にも。グーグルだけじゃなくてさ、つめたい、濡れた土にちょっと触ってみなよ。だれかしゃべってる、それだけじゃなくて、そのだれかにも、名前も身体もあるんだよ。
つめたい夜にも、触ってみなよ。朝まで持ち越せないそわそわした心持ちにさ。なつかしい指輪を出して嵌めよう。いつもは買わないジュースを買おう。できないのがいやなんだよ、上手にできないのが嫌。だから汚れて傷ついて、いいじゃん、泣きながらみじめ。帰っておいで。タクシーはつぎつぎくる。走ってもいい。キーワードがいやなら、作ればいい。作れないなら真似して、ほら、ほ、し、の、こ、わ、れ、か、た。それとも、ば、ら、の、さ、く、ま、ぎ、わ。きみのことだよ。


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