哀しみの聖地/
塔野夏子
僕らをつなぐものは
あの哀しみの聖地だけ
もう今はたやすく訪れることもできない
あの場所の記憶だけ
今頃はまた あの場所をふちどるように
菫が咲いているんだろう ちいさな光を纏って
僕はおもい返す
あの場所を静かに浄める風のことを
あの場所に降る星のことを
君もたぶん折に触れ
おもい返していることだろう
僕らが再び会うことがあるとして
それを多分互いに
言葉にはしないけれど
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