天国のない島/AB(なかほど)
譲治は
転んでもすぐには泣かずに
ひざ小僧の痕を
ひとつふたつと
数えていた
数えているうちに
血が滲んできて
滲んでくる血を見ているうちに
お婆が寄り添ってきて
優しい手でひざ小僧を
ツルメックェー
ツルメックェー *
仕上げに
痕をさすった手で空を切った
譲治の
家のガスレンジの向こうには
仏壇のように
お茶とお酒とお米が供えられたヒヌカンがあって **
お婆は朝な夕なに
黒線香を立てていた
お米を取り替える時には
下げた米粒を譲治の頭にすりつけ
チャーガンジュウ
チャ
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