春 雷/
塔野夏子
窓から夜明けがはみ出してくる
それを待ち望んでいたのかも
もう忘れてしまった頃
あるいはいつしかむしろ
望むようになっていたのではないか
夜が終わらないこと を
夜が長すぎたから
もうわからない
いま夜明けがはみ出してきている
その窓から
かつては君を見送った
その記憶は
本物か 幻か
いまはみ出してきている夜明けは
本物か 幻か
いずれにせよ
その窓の彼方から
仄昏い春雷のアルペジオ
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