鏡像 【改訂】/リリー
 
設の、スタッフさん達の事である。
 「うん。集会室丸見えやもんな」
 「スクーターのお坊さん、しょっちゅう来てるしなぁ」
 
  当時、スペシャリストでなかった私たちは天使の仮面を被る死神でもな
 く、人間であり。「寮母」とは何なのか?再び胸に問うてみる自分がいた。
 おのおの口には出来ない想いを抱える、組織の歩兵であり「痛い同士」で
 あったとも言えるだろう。

  そして私は二月下旬の深夜、日赤救急医療外来のベットに居た。
 「血が出ませんね……。ごめんなさい、こっちの腕もダメですね。血がね、
 嫌がって血管から出てこないわ。痛いけど太腿の付け根にしましょう」
 中年の看護婦さんから五本目の採血の注射針を打たれる。
  高熱と下腹部痛を訴える私へ、精密検査の為の入院が宣告された。べッ
 トの上での苦しさや不安よりも入院という医師の言葉を聞いた瞬間、私の
 背中は軽くなったのだ。





               【次回へ続く】
  

 
 
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