鏡像 【改訂】/リリー
 
  第六章 「死の砦?」



 「な、見て。またやってはるわ……『松の廊下』」
 「ほんまやなぁ」
  午前の館内清掃へ向かう若手職員らが足を止める視線の先には、主任と
 副主任の姿。朝礼を終えた新館の会議室から、旧館へ戻る副主任を追いか
 けて来た主任。中庭に面する外廊下では、引き続き二人の論争がなされて
 いた。

  この頃、主任は若手職員らへも愚痴をこぼしていた。
 「嫌われ役になれへんかったら主任なんか、務まらへんのやで……」
 深刻化する職員の業務負担を軽減しようとする主任は、組織的なカリキュ
 ラムを優先する。旧館の長、副主任は多少なり時間と手間をかけて
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