空に咲く鳥/木立 悟
空を破る鳥があり
空を貫く鳥がある
裂けめと裂けめの間から
別の空はすぐ消える
見る鳥だけがそれを見る
去る鳥だけがそこへ去る
雨と緑に
鴉ばかりが実っては鳴く
緑の重なりに生まれる黒の
重なりの重なりに生まれる鴉
木々の上にも下にもなり
空にも地にも落ちつづけ
土さえ知らない笑みの葉となる
午後が鳥だと気づいてはじめて
咽のなかの羽が聞こえた
碧い碧い声だった
行方なくはばたく歌だった
青から空へ
空から青へ
水のなかの手のように
鳥は姿を変えてゆく
ひらく前に咲く匂いのなかで
触れる前に咲く気配のなかで
飛び去る午後のかたわらを過ぎ
歌は鳥になってゆく
鳥は歌になってゆく
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