昇音/木立 悟
水の流れに
声は生まれる
ゆっくりとした高まりの
終わりのように反りかえり
声はまだらの身を起こす
鍵の花は水に咲き
傷をひとつずつ閉じてゆく
いつか流れに分けられた
互いを知らない湖たち
互いを知らない滴たち
向かいあうふたつの幻が
人の姿に揺れながら
空へともどる声を見ている
胸と胸のあいだは銀に
重なる手のひらは金にかがやき
もどりつづける鈍を見ている
羽に抱きしめられる夢と
羽を抱きしめる夢からさめて
けだものはひとり 青を見た
あたたかさを残す腕を映し
ひび割れたまま重なり すぎてゆく
空は鳥かもしれなかった
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