鏡像(16)「寮母さん」/リリー
 
 「な、見て。またやってはるわ…『松の廊下』。」
 「ほんまやなぁ。」
 午前の館内清掃へ向かう若手職員らが足を止めて
 視線を投げる主任と副主任の姿
 朝礼を終えた会議室から
 旧館へ戻る副主任を追いかけて来た主任、
 中庭に面した外廊下では引き続き論争がなされていた

 この頃、新館の主任は若手職員へも愚痴をこぼした
 「嫌われ役になれへんかったら主任なんか務まらへんのやで…。」

 深刻化する職員らの業務負担を軽減しようとする主任と、
 多少なり時間と手間はかかっても
 柔軟性のあるケースバイケースな対応を試みようとする
 旧館の長、副主任との対立は深まっていった
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