リリシズムが泣くのです/秋葉竹
つまり笑顔の絶えない
しっとりと濡れてる
やさしいだけみたいなあの部屋を想うと
泣けるのです
黄昏の駅のホームに
ゆっくり流れる
ひとへのおもいやりを
掠れた悲しみだと感じてしまう
そこではすみませんでしたと
頭を下げてしまう
なんてのは
あたりまえなのです
みあげると
黒い空が
それでもゆっくりと東から西へ
ミリ単位で動くグラデーションが
なんだかいいのです
すこしのあいだ
なにもかも忘れさせてくれる
まぼろしにくるまれた夜の
静かなやさしさが
好きなのです
か細げなガラスのハートの月が
笑えないきまじめな愛情を
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