のらねこ物語 其の二十八「赤提灯」/リリー
「お前さんも一端の深川の、のらねこになったじゃねえか。」
おきぬに勝手口の木戸を開けてもらって近江屋から帰るトラの前に
表通りの天水桶の陰から現れる 長楊枝咥えたイワシ
「あんたの縄張りに了解も無しに、すまなかった。勘弁してくれよ。」
頭を下げるトラに
「いいってことよ。構わねえさ。」
人通り途絶えた表通りを何とは無し並んで歩く二人は
通りの外れまで来ると 空き地に犬の五郎蔵が出している
屋台の赤提灯を見つけた
通りがかると いきなり屋台から呼び止める声
「お、おい、お前トラじゃねえか!」
「あ!ハチの父っつぁん。」
古びた下駄を足
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