のらねこ物語 其の二十四「おりん」(二)/リリー
「そうだったのかい。清吉さんて…たしか、縁日で逢った時
おりんちゃんと一緒だった、あの手代さんだよね。」
勇次は、縁日でおりんから紹介された事のある
清吉の顔だけは知っていた
「真っすぐな目をした優しそうな人だよね。」
清吉は今年十八
実直な気質で売り掛け先から信望を得て
番頭達からも可愛がられていた
手代衆の中には そんな清吉を
妬む年上の手代もいたほどである
そのために 店で大人しく頭を下げる事が多い清吉は
丁稚達からも親しまれていた
おりんが近江屋へ奉公に上がったばかりの頃から
清吉は彼女に優しかった
「清さんが私に優
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