のらねこ物語 其の二十ニ「お煙草入」/リリー
「ちょいと、八丁堀、どうしたのさ?」
表通りにある木戸に立って
長屋の並ぶ どぶ沿いの路地から出て来た同心へ
声を掛ける女
「なんでい、加代か。」
手製と思しき旗を持って「何でも屋」の売り込み中の加代
なかなかの美人だが金には がめつい
浮かない顔する中村主水はボヤき始める
昨晩、彦二んとこによ、泥棒が入りやがった。
この辺りの家に入っても盗むもんなんかあるわけねえのに。
マヌケな奴だぜ。泥棒の野郎、寝ている彦二夫婦をゆり起こしてよ、
「俺は泥棒だが、あんまり貧乏なお前さん達には驚いた。
かわいそうだから、少し恵んでやろう。
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