のらねこ物語 其の二十一「木彫りの虎」(ニ)/リリー
 
パッと
 顔を、おりんへ向けた
 可愛らしい子供の声で口を揃えて言ったのだ
 「え?あれ、虎だったの!てっきり猫かと、思ってました。」

 夢から覚めると隣で口を開けいびきをかいている
 おゆうの顔
 おりんは 独り笑いを洩らす
 「そんなはずって、ないじゃない。」

 けれども その日から掛け軸の金魚はまた泳ぎ始めたのだった

 近江屋では掛け軸のおかげで客足が伸びたため
 近江屋が大家である長屋の人達へ、週に一度の炊き出しを
 するようになる
 そうして 旦那様の弟である大番頭さんが
 暖簾分けで春になれば深川にもう一店
 出すことになったのである。
 


  其の十九、其の二十、其の二十一については、
  古典落語の演目「ねずみ」より引用連想表記している箇所があります。

 
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