のらねこ物語 其の十三「金魚玉」(二)/リリー
 
 夕映の 風にそよぐ
 お堀端の柳の枝は青々として
 「今夜も、蒸すのかね…。」

 低く重なった綿雲を見る
 蔦吉の 下駄の鼻緒は切れていた
 「仕方ないね。」
 下駄を脱ぐ右足

 「待っておくんなさい。」
 背後から呼びかける若い男の声

 挨拶する男は膝まずき
 切れた鼻緒の下駄を預かると
 自分の太腿へ 裸足をのせるように促した
 懐中から取り出す手拭いを割いて
 直し始める男を 見下ろす蔦吉

 「あんた、名前なんてんだい?」
  あんたって、綺麗な目してるねぇ。
  これ、さっき金魚売りがくれたんだけど。
  あんたにあげるよ。
  なんで
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