詩を書くこころ/岡部淳太郎
 
何かのふりをして歩いていると、詩を書くこころが僕
のなかからふらふらと彷徨い出て来た。そいつはゆら
ゆらと漂うように移動して、道行く人たちをとおくを
見るようなぼんやりとした眼差しで見たり、空を見上
げて、実際にその奥にあるとおいものを見通そうとし
てみたり、いつまでも一つところに留まってじっと考
えこむように黙りこんでいたりした。詩を書くこころ
のそんな様子を、僕は子を見守る親のような気持で不
安げに見ていた。それは曲がりなりにも僕のこころで
あるため、人から変な目で見られてしまう。詩を書く
ことは変なのだ。その変なことを、一人黙々とつづけ
てきたゆえに、僕のなかから詩を書
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