明け方の霊/岡部淳太郎
目醒めると
この心に寄り添っておとなしくしていた霊が
ゆっくりと時の隙間にすべりこんできて
顔なじみの友人のように
この肩の向こうから微笑みかけてくる
それからは いつも通りだ
神をも恐れぬ態度で
この明け方に揃った事物たちを睥睨し
この時間だからこそ赦されたひそやかさで
窓枠をそっとふるわせて
この内と外の
気温の差を確かめては
この心を使ったつぶやきを
息とともに周囲に拡げる 準備を始める
詩が
歌のようなものが
空気のなかに滲み出してゆく
(2021年3月23日〜25日)
戻る 編 削 Point(4)