よみがえる/ただのみきや
とやわらかい内装の
貝のように
かすかに開いたすき間から
つめたい沈黙の触手をのばし
探れ探れ
なにかに触れて触れられて
泣くように笑う
なまぬるい血肉
死の産着をふるわせて
孤独と誤読に酔いしれながら
棘のある跳ね脚が
蟻の巣穴でひくりと動く
自らの腹を蹴破って生まれるために
地の底で眼球は天を湛えていた
色彩よ造形よ
響きよ音色よ
もの言わぬ黒の群れから匂い立て
蝶は羽化し
風とたわむれ
蜘蛛の巣を飾る
キリギリスに齧られた晩夏の午後
(2024年1月27日)
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