入退院後の日記/由比良 倖
 
たらと喉が渇いて、覚えているはずの自動販売機の場所まで歩いていったら、見事に迷ってしまって、いつの間にかスタッフさんの事務室(?)みたいなところの前に来ていたり、中央に液晶テレビの置かれている薄暗い広間のようなところに三回も戻ってきてしまって、テレビの前に立っている人と、三回すれ違ってしまった。トイレに行き着いたので、洗面台の前に立って、自分の顔を見たら、大丈夫、怪しい人ではない、と思えたけど、あまりそれが自分に見えなくて、とても怯えている、疲れた病気の人に見えた。
 乳酸菌飲料を無事に買えて、その冷たさを片手に感じていると、自分が少し社会生活をしているような、ほんの少しの安心感を覚えた。

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