非在の姉弟/ただのみきや
 
柳がゆれていた
小さな氷の粒が
各々太陽を抱いて踊っていた

卵をひとつ割るように
今日という日は生まれた
宇宙がそうだったように

ヒヨドリの声で問う
己とは
欠片ばかりで像を結ばない

一生分の時間
あるような記憶
からまった雪の糸くず

きらりと光り
なにかを映し
誰かの吐息にフっと解け

日常の風景や出来事が
影へ収束する
夢がその源泉へ戻るように

柳がゆれていた
凍らない湖みたいな空で
綺麗に袂をゆらす死者

六月とはちがう柳
宇宙を映す柳
わたしを映す宇宙

そうしてなにも映さない
誰も知らない
なにものでもない柳とわたし



           (2024年1月13日)









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