ひとり/Giovanni
風が強く テントを打った
毀たれるような寒さの中で
ストーブにあたった
5つの頃 寂れた駅の入口で
飴色の夕日の中で
吹きすさんだ風と
おんなじ音が聞こえてきた
目を閉じると
あの日の僕が見えてくる
あの日 あの時
いつしか いつか
こんな夜を迎えるなんて
誰が思ってみただろう
おおうぃ 聞こえないのか
君のちっちゃな顔 不安げな眼差し
か細い身体 赤く霜焼けた両手
ずっと 見続けてきたんだよ
だから こっちを向いて
言ってみないか
寂しかった と
さてはて こんな寂しさなどは
いつまで経っても消えはせぬ
風が強くて 火は焚けない
薄茶色の幕の中
ストーブの青い火を
ひとり
ひとりで 愛でながら
ゆっくり
ゆっくりとお茶を飲んでいる
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