夏に沈んで/有邑空玖
丘の上の工場から
午后のサイレンが聞こえて来る
いつもそれを待ち侘びていた君
遠くまで行きたくて飛び乗った電車
あれは過去のこと
海を見ていた
太陽は焼け付くようだった?
白昼夢にも似た記憶
君の眸には常時夏空
声を聴かせて
君の声を
どうぞ云って
「さあ進みましょう」
見失ってしまう前に
僕の手を引いて
どうぞ嗤って
凡てが君で
此処には何も無い
拙い言葉で僕たちは歩き始めた
永遠は存在しないことだって知ったし
道はやがて海へ辿り着くはずさ
不確かな真理で形成されている世界
尽きることのない探求
壊れそうだ!
叫び出しそうだ!
溢れる感情に名前なんて無い
そうだろう?
何処までも行こう
足取りは軽いよ
どうぞ云って
どうぞ嗤って
凡てが君で
此処には何も無い
君が居ないと云うだけでこの世界は酷く広い
夏は
いつになれば終わるのだろう?
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