音楽と精霊たち?/朧月夜
 
7.コーダ


 その数日後、葉子は数カ月ぶりに弟に連絡を取った。あの日起こった出来事については、自分の幻覚か幻想か分からなかったので、話さなかった。ただ、自分の気持ちだけを素直に話すことにした。

「わたしね、この家に帰ってきて良かった気がする」

「そうなんだ。あの家は、何か温かいんだよ」

「それから、今の仕事を選んで良かったと思うの」

「S市にも仕事はあっただろう?」

 弟が答える。葉子も弟の言葉には同感だった。たしかにこの家の印象は温かかったし、中学生相手に音楽を教えるという仕事も、だんだんに充実したものとして考えられるようになってきた。ただ、あの日
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