十二月、あたたかい雨の日に/
山人
スマホが鳴って驚く
それくらい何もなくて
ひどくあたたかい
十二月の雨
窓際に並べた
不安の広口瓶の
埃をはらえば
鋭角な触覚が
のたうちながら蠢いていた
干からびた私は
十二月の季節はずれの雨に
いくぶん湿り気をとりもどし
わからない何かを求めて
見えない未来を少し
暖めようと
しているのかもしれない
十二月の雨は
何ももたらすことなど
なかったけれど
一つまた年を越えることを
かすかに
望んだ日でもあった
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