テレビ放送/たもつ
 


ほつれていくテレビに
故郷が映った
見慣れた橋や川面の姿
人も映っているけれど
ほつれていて
よくわからなかった
会釈くらいはしたかもしれない
そう思うと
雨の音が聞こえた

忘れていた化石になる夢
側溝に足がはまって抜けなくなる
それが夢の始まりだった
春の陽にあたりながら
ゆっくりと化石になっていく
泣きたくなるほど
長い時間が要るのだと
その時に初めて知った

新しい風除けがいる
と言い残して
買い物に出掛けたまま
母は帰ってこなかった
しばらくは
窓を開けておいたけれど
入ってくるのは
別のものばかりで
後でうまくできるように
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