農夫は詩人である/肥前の詩人
 
  農夫は詩人である
              こうず まさみ

農夫は田畑で働く詩人である
土の匂いで土の声を聞き
土の匂いで土の願いを受け止め
命あるものを育てる

蜜柑の収穫が終わると
くつろぐ暇も惜しいように
梨や葡萄の剪定を始める
どの枝を残し
どの枝を切り落とすのか
詩人の眼が瞬時に判断していく
実りの季節を頭に思い描き
農夫は推敲を重ねる

なだらかな斜面に両足を踏ん張り
寒風に身を縮みこませながらも
陽が傾くまで
鋏を入れたり 紐で縛ったり

農夫は 大地に立つ詩人である
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