躓き/たもつ
 


昨日の末から断続的に
小さな一年間があり
天気の名前を作って
折り畳んでいく
優しい、誰かのために
二言三言の伝言と
朝用の傘を残しておいた
雨の中身が水になる瞬間の
映し出される風景が好き
ずっと眺めていたいのだけれど
やがてそれらは
緩やかに弧を描いてなくなる
目を瞑る
そっと動かしてみる
動かせるところが
多分わたしの身体
狭く許された範囲
遠くまで見慣れた陸橋と
数行の願いでできた校歌のある街
手を振りながら力尽きていく
合唱部や関係者のみなさん
本当はあんなふうに
なれたはずだった
午前と午後が順序よく
繰り返される日々の途中で
ある日わたしは
うっかりと躓いてしまった





(初出 R5.11.14 日本WEB詩人会)


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