駅前/たもつ
 


午後の水泳の後のような
細く眩しい筆跡
液状のカーテンでは
不都合なことが多々あり
懸案となっていた模様替えの
おさらいをしておいた

燃えるごみの日の
温かな坂道の傾きを指でなぞり
落下しているみたい
放物線を描きながら
あなたは今、ひとつの
食事を終えた

駅前に行ったことがある、と
あなたは決まりごとのように
話し始める
駅前なのに駅の出てこない話
雪が降り続け
白い、とあなたが言うだけの話

その駅から
わたしは一人列車に乗る
雪のないところに行くつもりだった
本当は一緒に行きたい、と
疲れ果てて眠っているあなたに
語りかけるだけの話




(初出 R5.11.11 日本WEB詩人会)

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