問い/木立 悟
 



林の前を透明が過ぎ
曇をわずかに残してゆく
枝が風に
風が枝になるさまを
雨は照らしつづけている


水と水のふるえのはざまへ
羽はさしのべられてゆく
水を聴かず 音だけを見て
はばたきははばたきを連れてゆく


海に降る空
岩肌の赤
灰は緑に
緑は灰に
まわる午後の微笑みのなか
生まれて初めて花を問う子へ
答えられずにたたずむばかり


草の上の鈴と鐘
金の文字に降る緑
静かに朽ちてゆく日々を抱き
野は歌いつづけている


ふたつの夜の天気雨
花と水に映る花
消えてしまった色のまわりに
小さな音は降りつもり
失くしたかたちを描きながら
花の名前をささやいている







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