積木/たもつ
手はさわり
落ちていく
あたらしく
たどりつく波
その波のかたち
平日の空気を
涼しい寝台特急は泳ぎ
車体を残して
溶けていく
あなたは積木の
手本をしている
手は繰り返し
手はすり抜ける
瞬きの途中で
夜明けを迎える人や
物の静かなため息
そして
それに見合った暮らし
誰も壊してはいけない
細やかな暮らし
風や砂が並べられた
市場の片隅で
珍しい色彩の夢を見た
そう言って
母親が子供を
抱きしめている
あなたが手本をやめると
積木もあなたも
ひとつの記憶に
綴じられてしまう
(初出 R5.10.18 日本WEB詩人会)
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