行 列/塔野夏子
僕らは 一列に並んで
少しずつ 進んでゆく
かぎりなく長く思える柱廊を
誰も 一言も発さないまま
僕らは 白い衣を着て
白い布で覆われた銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく
僕らは 何も知らない
この柱廊は何処まで続くのか
白い布の覆いの下 銀の皿の上には
何があるのか
(緑色の小鳥のなきがらのような気が
何故かするのだけれど)
この列の先に 誰が何が待つのか
僕らは 一体誰たちなのか
ああもしかすると 僕ら は すべて
僕 なのかもしれない
いま少しずつ進んでいるのも
あるいは柱廊ではなく 並木道かもしれない
(小鳥の声は 聴こえないけれど)
いずれにせよ
僕らは一言も発さないまま
列をいささかも乱すことなく
銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく
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