秋冬/リリー
栗の焼けるにおい
私が一人 歩いている街中に
ほろ苦く
かさかさと
音を立てて秋が 散る
雑踏をさまよいながら
ほのぼのと胸うずめるなつかしい思いが
何と暖かく 私を包む事か
黒い毛糸の帽子を編む夜
一杯のカフェオレ
まろやかな香りに優しい時間
深まりゆき
古城を ガラスの城の様に映すイルミネーションに
物も言わず冬は訪れ
親しい人達への
うつぼつと湧きあがる愛情の中に
確固として
冬は訪れ
風の腕の中で
ねりかためられ
吹き散らされる
わたしという一個は喜び勇む
ああ、確かな響きで
冬が訪れる
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