限界の先を夢見る/こしごえ
あの人の まなざし深く静かな
群青色は列をなして
宙を見つめている
人類の亡んだ地球の岸で、
あの人の亡霊が釣りをしている
風はそよそよと光り
空には雲が
ぽっかりぽっかりと浮かんでいる
これが本当の平和な自然か
か?
大昔には私が居た。
あの私
私の好きな言葉は
「行雲流水」
「放てば満ちる」「足るを知る」
「これも運命 天の自由」
できるだけ これらの言葉を
忘れ去らないようにしたいけれど
と妄想をする私の現在に
あの人の亡霊は
問い続ける
「愛は命を救うか」
一概には言えませんね
ぽぅっ と闇に灯るほのかな声
「魂という命は、絶対ではないけれど
大切であることには変わりない愛だ」
あの人の亡霊は
宙を
通り越して
本当のことなんて分かりっこないが
一個のパンが一瞬だけ命を救った
※ 初出 2023.10.12 日本WEB詩人会
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