嵐のカンパーナ/嘉野千尋
 


  嵐の日にカンパーナが遠くでないている
  そんなに悲しい声でなくのはやめてくれ
  森が揺れているよ
  悲しい悲しいと、
  カンパーナ
  誰もおまえの森を奪いはしないのに
  そんなに悲しい声でなくのはやめておくれ
  稲妻がおまえの横顔を美しく照らし出すだろう
  そこには冷たく流れる涙が、ひとすじ
  誰もおまえに口付けを望みはしないのだから
  カンパーナ、
  悲しい声でないてくれるな
  森の中へお帰り
  ここへ来てはいけない
  カンパーナ、おまえの影をわたしは見たよ
  ここへ来てはいけない
  嵐が森を揺らしても
  カンパーナ
  悲しい声でないてくれるな



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