伝えたい言葉を伝えるために/ベンジャミン
駅のホームで
迎えを呼ぼうと取り出した
携帯の電池が切れていた
取り残されたように
吐き出されてゆく人の群を眺めながら
一つの世界から切り離されれば言葉も出ない口を
カタカタとモールス信号のように鳴らしても
電波にはなってくれない
「帰りたい」
という純粋な気持ちを伝える方法が見当たらず
うつろに歩き出すとき
早回しのような人の流れに乗れないことに気づく
電池の切れたおもちゃのように人波にもまれながら
あきらめの視線の先
「帰りたい」
と、呟いた言葉が見えそうなほどでも
思えばそう
「早く帰ってきてね」
と、言ってくれる人のその言葉さえ
何かに置き
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