メモ1/由比良 倖
の、皺の奥底まで、音楽が浸みていく。その血流量の増加や、シナプスの電気の発火を、僕は感じる。
今脳内で、何処の細胞が騒いでいるか、僕は実際に知覚できる。……それって普通の感覚なのではないだろうか? それを感じない人は、音楽を主に身体で感じて、脳では感じないのだろうか? それとも何にも感じない? 僕は身体でも音楽を感じる。
バロウズが、麻薬中毒者にとって身体とは、麻薬を打つための機械に過ぎないということを言っていた。僕にとって身体とは踊るもの。身体中の筋繊維や関節が喜んでいる。でももっと気持ち良くなると、身体を一切感じなくなる。キーを打つ指先の快感だけを感じる。眼鏡越しの柔らかな世界。
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