必要のない階段 ー下り編ー/菊西 夕座
 
必要のない階段がわたしにとって必要なのは
 閉鎖(とざ)されたスクラップ工場の壁にひっつく残骸で
  時代にとりのこされた孤独の分身そのものだから
   この苦々しい感傷をくろい笑いでわたしが踏みつぶすとき
    おまえは手すりの赤錆をいっそう腐らせて応えてくれた
     おまえが世間から見捨てられていればいるほどいいなんて
      わたしのしけた心はどうしてそんなにひねくれたのか
       夏には蔓草でびっしり覆われておまえが心を隠してくれた

       もうわたしにはおまえのことを天使と呼ばせてくれないか

       そんな天使の照れ隠しにせめてもの償
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