陽の埋葬/田中宏輔
 
、われらには死後の生がある。すべてが瞬間のきらめき、つかのまのものだ。だとしても、われらには死後の生もある。たしかに、ただ、ほんものの美は瞬間のきらめき、つかのまのものであって、死後において語られる言葉のなかにはない。言葉ではない。言葉にはできない。語ることができないものなのだ。それが、わたしには恐ろしい。しかし、言葉は装置でもある。ただ、こころのなかにだけではあるが、美の瞬間を甦らせることができるのだ。つかのまの歓びである、つかのまの悲しみを甦らせることができる装置なのだ、言葉というものは。個人としては、だな。三島は苦笑した。いや、個人を超える伝統というものもまた、死者たちが図書館で語る言葉によって維持されてきたのだった。
 飛行船がゆっくりと上昇していった。

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