月の村 (散文詩 8)/AB(なかほど)
送りの火が畦道をねり歩く。
やがて、日が沈む頃に、月が出るのを待って
いる。廃線脇で、次の電車と月が出るの待っ
ている。虫の声と踏切りの音はいつまでも、
凸凹配位座で鳴り続けている。
まだ当たり前のように、季節には穀物が実り、
スクが浜に、人に感情が、まだ当たり前のよ
うに、月は空に。そんなにありふれてもらっ
ても困るのだけれど。
目を閉じた世界では、凸凹配位座はいつまで
も漂っていて、地球のちぎれた塊でしかない
月との合間にも、繋ぎ合った手のひらの合間
にもある。そしてまだ当たり前のように、僕
らの細胞のひとつひとつにすべりこんだりも
する。
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