一昨日後ろの僕と/アラガイs
 
ち着いた。着いたというのは間違いで、実際は着かされたのだ。
しばらくして僕は(わし)になった。俺という時期は挫折した小説のように短くて、それでも強く印象に残っている。
あの頃の鏡は曇り、汚れた硝子板だけが残されている。映りみる空の時間も短くなった。(広島でも(わし)という言い方は消えかけている)
一度しか試さなかった僕の化粧。派手やかな女装。もしも夢中になってずっとずっと、親や姉の眼を盗み続けていたならば、ひょっとして僕の俺は硝子板のモードになっていたかも知れない。



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