渚にて/
そらの珊瑚
秋の風は寄せては返す波
蝉は近くてどこか遠い
空洞に宿った声もまたよそよそしい
蝶のかたはね、
蜘蛛のひとあし、
うすい影をまとって
手のひらにのせれば
軽くて重い
この夏を生き延びた命もまた
寄せては返す波
透明なさざなみ
ともしびを消した命は
すべからく
メビウスの輪の中の
永遠に交わらない
もうひとつの渚へ
戻る
編
削
Point
(7)