公衆便所[まち角26]/リリー
 
 「すみません。ちょっと、すみません。」
 耳にした 男の声

 近所の『なぎさ公園』
 夜空にそびえ建つ高層ホテル
 側に 野外劇場の石が組まれた広場
 置かれてある公衆便所の灯りだけが
 やたら明るい

 その前を通り過ぎようとした時
 はたと止まる 湖畔でウォーキング中の足
 見回すと 私へ呼び掛けた
 公衆便所のライトでシルエットな男の姿
 素通り出来ず、
 「はい。どうしましたか?」

 とっさに浮かび
 頭の中 めぐった未来の週刊誌
 連想するのも悍ましい
 記事の見出し

 すると 
 不気味な男 では無く
 笑いかけている青年だと気付く
 「スマフォのカメラ、押してもらえませんか?」

  (えっ?こんな、男子トイレをバックに!)

 彼は
 「ちょっと待って!」
 トイレの中へ戻り
 洗面台で洗っていたと云う 
 大きな魚を、
 右手に ぶら下げて出て来た
 「さっき、こんなの釣れたんですよ!写真撮って欲しくて。」
 
 この日以来 二十二時過ぎてウォーキングする事はやめたのだ
 
 
 
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